そっと見守るだけだ
タカヒロへ
二男が20歳になった。生まれた日は昨日のことの様に思えるが、あっという間に年月が過ぎた。
四ッ谷で生まれ、生後1年で水戸に引越して4年を過ごし、5歳の時に再び東京に戻ってきた。
物心ついてからは引越し知らずで、幼稚園から大学までずっと東京。まだ暫くは一緒に暮らせる生活が続きそうだ。
二男は落ち着いておっとりした性格。何事にも慎重で、転んで怪我をしたりすることは殆ど無かった。
特に年長者に好かれる性格で、親戚や近所のおじいちゃんやおばあちゃんに可愛がられた。
タカちゃんと一緒に居ると、日だまりに居るようで背中がポカポカしてくる、優しい気持ちになれる、と温かい言葉をもらった。
小学生の時、先生が二男に一番大切なものは何ですかと尋ねたら、二男は真顔で「家族」と答えたそうだ。
中学時代は、世話好きで面倒見が良いところがあって、友達には好かれていたように思う。
高校時代は部活に入らなかったこともあって、家に居ることが多くなった。
話し好きで、見た目は大人しいが家では一番のお喋り。たまに二男が不在だと、家庭内は火が消えたように静かになった。
4月に大学生になって、バイトをしたりサークル巡りをしたり。何を主に勉強するか、卒業後はどの様な道を目指すか、色々と考えている様だ。
試行錯誤の日々が続くだろうが、小さい頃の性格のままに、今まで通り素直に成長してくれれば何も言うことはない。
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私が二十歳を迎えた日を振り返ってみた。
遠い昔なのに、つい先日のことの様だ。
二十歳を迎えた朝は、茨城の実家を離れて東京新井薬師で一人暮らしをしていた。
目覚めた顔に、カーテンの隙間から射し込む朝日が当たって眩しかったのを覚えている。
一人暮らしの気楽さで、昼夜逆転の気ままな日々を送っていた。
今日はなにをして過ごそうか、自分はこれからどうなるんだろう。こんな毎日でいいのかな、なんてことも薄っすらと考えながら過ごしていたと思う。
しかし、大都会東京で一人で暮らす毎日に浮かれ、大学キャンパスや繁華街をフラつくのがとにかく楽しかった。
サークルの先輩で左傾のインテリな先輩がいて、膨大な数の新書を読み、能弁に語る姿に刺激を受けた。
全国各地から集まってきた友人と、新宿の居酒屋で夜通し話をしたり、映画を闇雲に観たり、とにかく楽しい毎日だった。
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二男もこれからあの様な、きらめく時間を過ごせるのかと思うと、心の底から応援してあげたいと思う。
たいそうなアドバイスはできないが、自分がこの年まで生きてきて強く思うことは、とにかく自分のやりたいと思う、好きな事をやれ、
就職の為とか、お金になるかも知れないなんてことは一切考えるな。
自分は何が好きなのか、何がやりたいのか、それだけを一生懸命考えろ、
もしそれが見つかったら、それに全力で取り組みなさい。
やりたいこと、好きなことはもしかしたら途中で変わるかも知れない、
その時は気にせずどんどん軌道修正しながら、とにかく好きな事、やりたいことを探し続けなさい、
といってあげたい。
そして、そっと見守るだけだ。